犯罪の被害者にならないために

犯罪の被害者に関して研究する学問に、被害者学がある。参考文献によれば、被害者とは「憲法によって保障されるべき基本的な権利を侵害された人間及びその組織」である。 被害者と加害者の問題を論ずるとき、被害者の有責性と加害者の法的責任が問われる。 犯罪における被害者といっても、

通り魔殺人事件にたまたま遭遇したというように被害者に全く責任がないという事件より、被害者と加害者との何らかの関わりが事件を招いたという方が多数を占める。では、被害者にならないための具体的な対処というものがあるのであろうか。ここでは、身体的に加えられる暴力などいわゆる刑事事件を中心にとりあげてみたい。

参考文献:諸澤英道『新版被害者学入門』成文堂(1998年)

1.被害者に責任がないとき

加害者と面識がなく、被害者に全くと言っていいほど責任がない、通り魔事件と呼ばれている事件から検証してみよう。

(1)通り魔

通り魔というくらいだから、いつどこで事件に遭遇するかなんて誰にもわかりはしないし、事件が起きた場所に何故行っていたのか、などと事件後に言う人がいるが、皆それなりの用事があったからであろう。しかし、事件をよく検証してみると 事件現場に居合わせても、間一髪、難を逃れた人がいるのも事実である。 同じ被害者になっても生命にかかわる場合とそうでない場合があるのも事実である。この差が何にあるのか、誰しも知りたいところである。

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事件現場で、たまたま加害者との距離があったから難を逃れたというのは、見方によっては運がよかったからで片づけられてしまう。 通り魔事件を分析してみると、通り魔事件の起こった場所は、駅や人の集まる繁華街、歩行者天国などであり、 通り魔事件の加害者は、無差別に襲っているようだが、よく分析してみると、一般的に自分より弱い人、弱そうな人を襲う例が多いようだ。

(2)対処法

駅や繁華街における、雑踏の中で、イヤホーンで音楽を聴いていると、周りの状況の変化が敏感にとれず、逃げ遅れる原因となる場合が出てくるだろう。特に、逃げ脚の遅い女性などは注意したほうがよい。 雑踏においては、周囲への目配りも忘れてはなるまい。人の動きに注意すること。 頭の隅に、通り魔事件が起きるかもしれないという意識をもって行動していれば、いち早く、逃げられる確率が高くなるだろう。

2. 加害者と被害者に接点があるとき

加害者と被害者に何らかの関わりがある場合を想定して検証してみたい。 こういった事例では、ある程度事件となる可能性が予測できるが、怨恨などが加害の理由になると、被害の程度は重くなることが考えられる。

(1)分析

加害者と被害者のかかわりがある場合を分析してみよう。  ①よくある事例、男女の別れ話のもつれが原因となっている場合についてである。いわゆるドメステイックバイオレンスから 逃げ出した女性を追いかける男、実は、一番危険な男で、相手を殺して、自分も死ぬということでよく事件となっている。  ②別れた元彼が、よりを戻そうとして、ストーカーになり、追いかけてくる場合という例も実に危ない。よく事件にもなる。

(2)対処法

 ①被害者となった女性は、一時身を隠しても、見つけられたとき、 ほとんどが生命に危険が及ぶほどの危害を加えられていることが多い。 

従って、女性の保護施設(シェルター)に一時的に身を隠すだけでなく、いわゆる蒸発という手段 で、行方をくらますようにしないと家族にまで危害が及ぶことになる。
 ②元の交際相手というのは、金を払わずに性的な関係が持てるということから、こういう男の常としてよりを戻すためなら見境がなくなることも多い。この場合、警察、友人、家族の助けを借りて、一人で交渉しないことである。ときには、身を隠すことが必要となることもある。 ただし、ストーカー事件の場合、交際したことがなく、追いかける男の一方的な思い込みという事例の場合は、警察が間に入ることで大きな事件とならずに解決をみることもあるが、甘くみない方がよい。

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3.性犯罪で被害者にならないため

女性の場合、性的な犯罪の被害者となる可能性が高いので、強制わいせつや強姦の被害者にならないための方策を検証してみる。

(1)知人

性犯罪で意外と知られていないのが、加害者と顔見知りの事件が多く起こっているということ。その理由は、被害者の油断と被害届けを出しにくい事情が考えられる。

(2)対処法

知人であっても、1対1とならないように、ひとりのときは自分の部屋にいれない。 酒席が特に危ない。飲みすぎないこと。帰りに送ってもらうときも要注意である。 職場においても、残業時に1対1となることは避ける。

(3)常習犯

いわゆる強姦魔と言われている常習犯が必ず近くにいるかもしれないと思ったほうがよい。事件のニュースを他人事としない。

(4)対処法

夜道に限らず、一人歩きのときは、つねに防犯ブザーを手に持つ。 集合住宅において、カギをかけ忘れることのないようにする。 自分の部屋に入るときが危ない。手には、防犯ブザーを持ち、いつでも鳴らせるように用意しておく。電車に乗るとき、映画館や公園などのトイレに入るときも要注意。現実に事件が起きている。 いきなり、襲われたらどうするか、いつもシュミレーションを重ねておく。