犯罪の加害者を減らすために

犯罪の加害者を減らすためには、あなたならどうする?

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1.法律と社会

中央大学で、刑事政策の講義を受講したとき、担当の藤本哲也教授が学生に質問した。 「自分は今まで、法律を破ったことがないといえる人は手を挙げよ」 「法律を犯すことが犯罪であるなら、自分の過去を振り返って、犯罪をしたことがないという 人はいないだろう」とも話された。 考えてみれば、車の運転をしている者なら事故でいつ加害者にならないとも限らないし、 人間だからふと魔が差すこともあるかもしれない。

思い出してみれば、交通ルールを守らなかったことなどかなりあるだろう。 でも、警察官に逮捕された経験があるものはそう多くはないはずだ。法は社会生活を 維持するための最低限の約束事である。
それでも、なお一線を越えてしまう者、加害者と呼ばれる立場になってしまう者は、 法律だけでなくすことはできない。しかし、減らすことは、可能ではないかと 考え効果的な手法を検証してみたい。

2.教育と規範意識

わかりやすく言えば、法律を守ろうとする姿勢のことである。この意識は、個人差があって、 人によって随分異なるものである。 この意識の差は、どこからくるのであろうか。やはり、家庭教育とくに幼い頃からの、親の しつけが大きいだろう。

  

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具体例として、 生命を大切にすること。 他人のものを盗ってはいけないと教えること。 弱いものいじめをしてはいけないということ。 交通ルールを守ることなどである。
小さいことの積み重ねが大事で、子供がおとなになったとき、無意識にルールを守ろうとするか どうかに関わってくるのではないか。 家庭教育におけるもうひとつの大事なこととして、「他者がいやがることをしない。 自分がされて嫌なことはしない」ということも挙げられる。

3、個人の気質の考察

かっとなってしまった、むしゃくしゃした、キレたという言葉が犯罪ではよく聞かれる。 育った環境や遺伝子や食事も影響しているようなので、検証が必要だが、情緒の安定を図る 方策として、格闘中心のコンピュータゲームでなく、本や映画、音楽などの娯楽に親しむ ようにする。

家庭においては、子供のときから、家事を手伝わせ、忍耐とか我慢する心を育てる。 学校においては瞑想する時間を設け、自分と向き合うことを繰り返す。 学校では、自分の行動をシュミレーションするトレーニングを学習課題とする。 自分の言動や行動がどういう結果を招くのかを学ぶ。

4、家族関係の見直し

最近の事件で、親を困らせるために犯罪をしたという事件があった。以前は、自分が こんなことをしたら、親や兄弟、姉妹が困るということが犯罪の抑止力になっていた。 かつての日本人がもっていた美徳である「恥ずかしい」という意識をもう一度呼び戻す ことが必要になってきた。

犯罪の加害者として、顔写真が報道されたりしたら、家族の恥である。 だから、悪いことはできなくなる。家庭には愛が必要である。家族間にお互いに 思いやる心を醸成させることが欠かせない。

5、社会の変革

人材派遣による労働法の形骸化にみられる就労条件の悪化、パート、フリーター等低収入 によるワーキングプアやネットカフェ難民が増え、年金制度の崩壊、医療保険未払い者の 増加等、希望が持てない社会を変え、やけを起こさなくてもすむような就労の確保をめざす。 就労できれば、次に家族が持てるようにする。

家族がもてれば犯罪者になることで、 失うものができる。そうなれば、やけは起こせなくなる。

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6、法の整備

米国ニュージャージー州では、性犯罪常習者に7歳の少女メーガン・カンカちゃんが強姦され、 殺害されたことから、性犯罪者の個人情報である名前と住所、顔写真、犯歴を地域住民が 知ることができるという法律、いわゆる「メーガン法」が成立している。 わが国においても、性犯罪常習者対策として、早急に成立が望まれる。

暴力犯罪を減少させ、常習犯罪者に、より効果的に対処しようと米国では、過去に2回重罪を 犯した者が3回目の重罪犯罪を犯した場合、犯罪の内容を問わず一律に仮釈放の可能性がない 終身刑にするという法律が制定されている。 この法律も性犯罪常習者やお礼参りをした者、札付きのワルと呼ばれている累犯者への対策として、成立が急がれる。

7、環境の整備

  • ○公共の場所での軽犯罪の徹底した取り締まりをする。犯罪学者ウィルソンと ケリングの「割れ窓理論」の実践であり、防犯カメラ、防犯ビデオを犯罪の抑止力とする。

  • ○町から落書きを一掃。
  • ○不良外国人の国外退去。
  • ○覚醒剤や大麻等の薬物売買の厳罰化による汚染の防止。

参考文献: 藤本哲也『犯罪学者のひとりごと』日本加除出版(平成13年)